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【令和のエンジニアのリアルキャリア論】広告やポジショントーク要素を排除して考えてみる ①情弱と思われるリスク編

【令和のエンジニアのリアルキャリア論】広告やポジショントーク要素を排除して考えてみる ①情弱と思われるリスク編

世のキャリア論がウソばっかになってしまっている背景

なにしろ、エンジニアバブルでしたからねぇ....。

様々なキャリア論が飛び交う現状ですが、現在の状況になったのは実は10年ほど前。アベノミクス(2012)の量的金融緩和政策などの資本市場向けの政策は投資マネー余りを生み。そのカネが流れ込んだのがIT関連ベンチャー界隈。そこからさらにカネが流れたのが人材紹介やプログラミングスクールなどの人材サービス。そこからさらにカネが流れた先が、現在も跋扈する人材系アフィリエイター界隈です。(当時はフリーのアフィリエイターが月に200万稼いだりするレベル)

参入障壁が無いアフィリエイター界隈には爆発的に人が流れ込み、競争が発生。急速にモラルが低下。その結果、圧倒的な量のアフィブログ等による、【Web検索結果を嘘で埋め尽くせば、嘘も真実となる】的な、近年のWeb広告事情を生み出しました。現在においても、アフィリエイターの残り滓のような人物達がSNS等で集客。リプ欄や裏側で人材サービスに登録を促す等の活動を継続しており、一定の影響力を維持していると思います。これらの多くは匿名アカウントであり、モラルが向上する要素はありません。主語デカで他者を貶めるレッテル貼ってみたり、経歴詐称してみたり、論理的につながっていない結論を出して来たり。サクラのアカウントなども駆使してみたりして、今日もターゲットの情弱さん釣りにいそしんでいらっしゃいます。

これで困るのはその他の一般人。【ウソをウソと見抜ける】が、【これが事実っぽい】と言う情報を見つけられない。見つけても確証を得ようがない。と言う事態が発生してしまっていることでしょうか。特に業界未経験者や就活学生からは、『困ってます』という感想がよく出てくる印象です。

情弱さんと思われてしまうことによるリスク

前述のような環境で被害を受けたのは情弱さんタイプの人物を雇用してしまったIT企業側です。もともとIT業界は離職率が高めの業界ではありますが、零細企業でも採用→育成→投資回収と言うスキームでの拡大は可能で、求人サイト上でも実際に育成投資するであろう求人が常に複数社分くらいは存在していました。
そこに、アフィリエイトサイトの爆発的増加の影響か、特に2017年~2018年頃。多数のIT企業で同時多発的に離職が発生します。当時私も様々な企業から話を聞きましたが、離職理由はどれも取ってつけたようなもので、実態に反するものや全く動機につながらないものなど、理不尽系の理由も多くみられました。(今思えば、人材サービスや、その広告、インフルエンサー等のトークをそのまま流用したものと思われる。)

それまでの離職率であれば未経験者への育成投資・回収が回っていた会社も、今後は回収が不可能となる事態が想定されることとなり、育成から撤退していきます。未経験者を『育成』する前提の求人が大きく減少。採用を継続している企業も採用要件を大きく変化させることになります。つまり、情弱さんの排除です。 特定の求職者層への投資効率が悪いので、これを極力回避するという事ですね。

※1 育成せずに即派遣する前提の求人は、未回収リスクがないため、減少しません。
※2 若い会社などが育成前提の未経験採用する場合は採用要件が緩いことも多いが、中長期的には育成から撤退していく感じ。

例えば、『エンジニアは最初の会社を1年で退職するべき』と言う考え方があるとします。
これは特にSES界隈・Webサービス界隈など、未経験育成が困難な業態において効率よく給与を上げる手段として実際に有効です。ですのでこれはまったくのウソと言う訳ではありません。特にSES業態では2年目~4年目あたりの派遣単価の伸び率が高くなりますので、このタイミングで会社を変えるイコール、上がった単価をベースに給与を再設定することとなるわけで、必然的に給与が高くなります。これはどのSES会社であってもほぼ変わらないでしょう。

さて。エンジニアバブルを経験し、IT企業は離職率を抑えるには情弱さんの排除が有効である。と言う知見を得てしまいました。このことを加味して考えた場合、このスキームがキャリアへ与える影響はどのようなものになるでしょうか。まず、社員を高度なレベルへ到達させる必要があるビジネス構造の企業があるとして、その企業の採用担当者の立場に立って考えてみましょう。まずは、履歴書・経歴書で人材を判断することになります。

実際に1年で転職できている訳ですので、1社目のSES会社はしっかりとエンジニアの経歴を積ませており、キャリア構築面で当時の所属会社側に問題があったとは考えにくいです。(SESは未経験の開発案件アサインが難しいので、むしろ会社はよくやったと言える。)しかしながらこの人員は1年で転職。かつ、給与が高めになっている。しかし、経歴は所詮1年。会社によってはまだまだ育成投資が必要です。さて、この人材の採用に積極的になることはあるでしょうか? 無いですよね。
実際の転職先で多くなるのは、【経験1年の時点で問題なく利益となり、投資も必要がない】会社になるかと思います。良し悪しはさておき、SES会社になるでしょう。SESは経歴書をもとに次の仕事を取る。売上が決まるというのが基本的な仕組みです。『高度な作業を行う自社チームに参画してパワーレベリング』とはなりませんし、責任を負わないのでキャリアの上限も決まってきます。そのようにしてSES層への定着が進み、時間経過によって応募可能先の先鋭化が進んでいきます。

※フリーランスは個人SESのようなものなので、フリーを目指すうえでは問題はありません。

メリットとデメリットのバランス

この短期転職を繰り返し給与を上げるスキームは、短期的に給与を上げる面で実際に機能します。これがこのスキームのメリットです。
それに対して、応募できる企業が減る(特に、継続的に育成投資を行う企業が減る)と言う見えづらいデメリットが発生しています。
※消えているものは知覚できないので、気づかないまま短期転職を繰り返し、詰む人も多い。

給与が上がった主な理由は派遣単価の上昇によるものですから、基本的には転職せずとも時間経過で得られたものである可能性が高いです。(厳密には会社による)一時的に前倒しで昇給したメリットは確かにあると言えますが、生涯賃金で考えた場合、どちらが有利となるでしょうか。

高度なキャリアへ成長させる動機がある企業群へのルートが細り、その動機がない・または薄い企業群が残る訳ですが。この企業群にはスキル低くともOK。その時点で利益になるからOKと言う考え方。ビジネスモデルの企業を多く含むと言う事になります。さて。どちらの企業群が、最終的なキャリアの到達点、及び、賃金は高くなりますかねー。確率で考えたら。

実際にはいろいろあることとは思いますが、このスキームの問題点は、短期的なメリットを過剰に重視し、中長期的に発生するデメリットを軽視していることです。生涯賃金を低下させる可能性が高い行動を実際にとらせてしまったら、そこからの立て直しは困難になります。2~3年の単価の伸びる期間に短期での転職を繰り返した人材。現在彼らはジョブホッパーと呼ばれ、少なくない企業が採用を回避するスタンスに。2022あたりからは本格的に人材市場で売れ残る姿を見かける様になってきました。転職可能な企業の幅を大きく狭め、ひたすらにSES企業間を転々とするだけのキャリアになってしまったわけですが....。デメリットよりメリットが大きかったようには、到底思えません。

実際、『デメリットの方がデカいだろ』と、サッと理解できてしまう人たちはけっこういる訳でして、彼ら『非』情弱さんはこのようなうっすいスキームに引っかかることがありません。採用担当者たちが考える、情弱さんの排除が有効と言う話につながってきます。

つまり。情弱と思われてしまうと、キャリア構築・生涯賃金面でとても損をする可能性が高いと言う事になります。


情弱さんと思われてしまう原因

基本的には、人材系アフィリエイト、人材紹介のCA、プログラミングスクールなどのポジショントークをガッツリ信じちゃってます系の人が情弱さんと言う感じかと思います。(近年減りましたが、SNS上のエンジニア系インフルエンサーも、だいたいはこれらのトークに乗っかって炎上マーケしていた感じですので、話す内容やベクトルはたいして変わりません。)

パターンとしては、『〇〇ではいけない』『△△しないといけない』みたいな論調ですね。

『〇〇ではいけない』

『〇〇ではいけない』は、現状に危機感を持ってもらう自己肯定感を傷つける等の目的があります。別に内容が事実である必要はありません。高度な知見を持つエンジニアをだますのはもともと無理ですからターゲット外です。完全なウソを言ってたり、一部の話を全体に当てはめて誇張して、一部の職種や業態に不利なレッテルを貼るなどの行動が見られます。
ウソが多いワケですので、この辺の話を鵜吞みにして外で言っちゃうのは超危険です。

〇ウソ・誇張の例

・SIer(SE)のスキルはWeb系(ソフトウェアエンジニア)より低い。

現実では、特にそういう傾向は感じられません。 SIerは外部人員を使ってナンボなビジネス構造になっていますので、大規模PJの下層部。結合テストの打鍵専門などでロースキルエンジニアが多数アサインされることはあります。ですがこれ、アサインされているのはSIの人と言うよりはSESの人ですね。逆に大規模ウォーターフォールの上層部は高スキルを要求されます。開発対象が大規模であるため、考慮しなくてはならない要素が増えるからです。
『Web系』は、人材業界側が作ったワードと思われ、何を指すのかは微妙です。(ここでは『Webサービス運営企業の社内SE』のことと仮置きします。)ブランドのあるメガベンチャー等の社員のスキルは高いことが多いです。開発対象も大きく、膨大なトラフィックをさばいていたりもします。逆に、零細ベンチャーの社員が超優秀勢で固められるという事は少ないです。まだブランドが低く、採用面でも有利を取れません。 
アフィリエイター側が、2者の中の現状から自分に都合の良い部分のみを切り取って比較しているような感じですかね。

・運用はスキルつかない。

作業内容によります。そもそも、Web系の仕事は主に運用です。作ると儲かるのはSIで、Web系は運用してユーザーに課金させると儲かります。

・Javaはレガシーなので、モダンなPythonのほうがいいよ。

Javaは1995年にリリースされました。 Pythonは1991年ですので、Javaの方が新しいことになります。また、どちらもバージョンの更新が頻繁に行われている言語です。
2つのプログラム言語は主な用途が異なっており、それぞれの用途において主流です。Javaはバージョンアップの際の後方互換性を重視しており、文法のルールも厳密な方です。これらの特徴は大規模開発、長期運用に向きますので、大企業の基幹システムなどで使われることが多く、ゆえにSIerなどで利用されることが多いです。 なお、大規模開発、長期運用はメガベンチャーのサービスなども当てはまります。Javaを採用しているメガベンチャーはけっこう多いです。(Kotlinに移行していたりはする) このほか、スマートフォン開発・組込みなどなど、用途がめちゃくちゃ広いのも特徴です。
Pythonはシンプルな文法と多数のライブラリが売りの言語です。3系へのバージョンアップの際に後方互換性を捨てており、動的型付け、処理速度が遅いなどの特徴もありますので、一般的に大規模開発やシステムには不向きと言えるでしょう。しかし、小規模な長期運用を前提としないシステムの開発などにおいては十分で、環境構築などの手間も小さく、非常にスムーズに開発を行うことができます。加えてPythonはAI開発の文脈のほか、AWSなどの操作、Excel内でコードを実行出来たりと、学習コストが低めな上に使い道が多く、使えるようになっといて損が少ないのも良い点ですね。
このふたつの言語、用途がだいぶ違い、【そもそも競合してない】ですよね。比較して上下を決めよう。マウント取ろう。という時点で痛いです。用途に合わせてチョイスするのが正解かなと思います。そも、レガシー、モダンと言う表現も、さすがに通じはしますが、だいぶ痛い感じを醸してしまうので、できれば避けたいワードだったりします。

・アジャイルはウォーターフォールよりも優れている

これも用途が違うものです。アジャイル側の開発手法は、『作るものが決まり切っていない』『大規模ではない』開発に向きます。契約は準委任契約となります。ウォーターフォールモデルは、『作るものが決まっている』『大規模開発』などに向きます。特に作るものが明確に決まっている場合は請負契約となることが多いかと思います。『作るものが決まり切っていないが大規模である』場合などは、優先順位の高いモジュールから優先で、開発フェーズをいくつかに分けてウォーターフォールモデルで開発。などの手段が取られます。これらは開発手法よりはプロジェクトマネジメント側の能力でうまいことやる感じですね。
とどめで、『アジャイル』とは思想・考え方を指すワードで、個別具体的な開発手法を指すものではありません。開発手法であるウォーターフォールと比較するならば、『アジャイル』ではなく、『スクラム』などの個別の手法が対象として挙げられるのが正しいですね。 どうです?だいぶ情弱くさい感じするでしょ。『ウォーターフォールは悪!アジャイルが正義!』って人。
※たまーに、アカデミックな角度からウォーターフォールに一利なしとかいう人もいるので注意な。彼ら分かったうえで言ってるから。ケンカ売ったらいかんぞ。

『△△しないといけない』

先の『〇〇ではいけない』で、現状に不満を感じてもらいましたから、次は求人サイトや人材紹介に登録、またはスクールに課金してもらわないといけません。目的は明確ですが、そのままを言ってしまうとさすがの情弱さんも気づいてしまいますので、求人サイトや人材紹介に登録、スクールに課金する理由を作ってあげる必要がありますね。エンジニアバブル期のターゲットはITベンチャー企業ですから、これらのITベンチャー企業を地上の楽園であるかのように語る広告が多くなります。この世で底辺であるSESやSIerを離脱し地上の楽園へ。スキルもついて、カネも上がり、おまけにすごくホワイトになるんだそうです。ベンチャーなのに。 そこに連れて行ってくれるサービスがあるならば、いますぐ登録するしかないですよね。 未経験からの挑戦でも、底辺であるSESを回避するためだったら、スクールに80万とか払いますよね。ITエンジニアになりたいんじゃない。地上の楽園にたどり着きたいんだ。

この手の動機の人物がすべてと言う訳ではありませんが、この手の人材が入り込んでしまうのは、まっとうにやりたいWebサービス運営企業等からすると迷惑だったりする訳でして、この一連の流れで利益を得るのは、紹介会社とアフィリエイターだけだったりします。

実際、『本当にWebサービス運営の中核社員さんだな』と思われる人が、SNS上でWeb系だからどうこう言ってるのって、あんまし見ない気がしませんか?  (たまーにSES離脱勝利宣言マンとかは見るよね) 引っかかる方も大概と言う印象ですが、前述の圧倒的な量のアフィブログ等による、【Web検索結果を嘘で埋め尽くせば、嘘も真実となる】的な広告効果は非常に大きなもので、現在もその傾向が続いている印象ですね。


〇ほかのトークの例

・外資系企業はいいぞ!

エンジニアよりは、SaaSの販売等の営業パーソン向けだったのかな? ガンガン紹介が決まる時期があったのだと思います。
2020のコロナで巣ごもり需要が発生。出勤・訪問できないわけですから、企業向けのSaaSなども拡販の大チャンスになりますよね。この時期は資本調達もでき、人員数も大幅強化した時期となるのだと思います。SaaSツールを開発するエンジニアの需要も強かったと思いますが、やっぱり売る人の需要が特に強かったのでしょうね。このバブルは露骨に崩壊し、数年後、米テック企業界隈で大規模なリストラが繰り返されることになっていきます。直接関連があるのかないのか、2025年12月現在においてもSaaSの販売等の営業は転職市場であまりがちな状況になっています。

・コンサルティングファームはいいぞ!

このあたりは業界外からの観測になるので、だいぶ推測交じりです。
2020のコロナは、事業会社に『それまでの売り方ができない』と言う状況を唐突に押し付けました。この問題への対策で、コンサル需要が瞬間的に爆発したんじゃないかな?と思っています。同時にこの時に復活したワードが『DX』で、国もDXを推進。助成金をあてにしたスキーム?のコンサルファームも爆増した印象でした。2020の後半から2023あたりまでのコンサルファームは絶好調で、各社ものすごい勢いで採用していた印象です。ですが、ここまで。SaaS企業同様に大規模なリストラがスタートしていくことになります。

・ジシャカイハツはいいぞ!

やはり人材サービス側で作られた言葉かな?自社内で開発する企業のことだそうで、Webサービス運営もあれば、受託開発メインの会社を含むこともありそうです。『ではいけない・しないといけない文脈』としてはSESが悪で、自社開発が正義と言う感じの構成になりますね。バブルが過ぎWebサービスで決まらなくなったので、受託開発側に流そうとしているのかな? この受託開発会社というのも定義がよくわからないもので、SES会社が受託やってますと言うてることもめっちゃ多く。なんかいよいよトークが限界化してきた感じもしますね。リモートワークが正義じゃなかったのか。

近年は、SIはいいぞ! に180度回頭?
特に2025年でしたが、アフィリエイターの足並みがそろわず、変なインフルエンサーも息をひそめた年だった印象があります。SIerを送客ターゲットにするアフィリエイターも目立つようになり、人気のSIerランキングなどをSNSで目にする機会が増えた印象です。 ただし彼らが言うSIerには別に『システムインテグレーターじゃない会社 』なども含んでいまして、いよいよぐっちゃぐちゃな感じに。

ヘー、えすあいあーて、ニンキタカカッタンダネー....。

まとめ

近年の迷走の話はさておき。とりあえず、企業に情弱と思われてしまうリスクや、どのような発言で情弱判定されている? などの参考にはなったんじゃないかな。だいたいは途中の論理に破綻があり、唐突に発信者にとって都合いい結論が出てくる内容になってたりしますね。アフィリエイターの多くはもちろん、人材紹介のCAもシステム開発や技術などに詳しい人は多くありません。だって、IT業界の中の人じゃないものね。 CAは、『決まるまで』の知識がありますが、『決まった後』の知識はほとんどないんです。よく『相談しに来ませんか?・市場価値を確認しましょう!』的なトークを見かけますが、今日の情弱判定ワードのあたりでも感じられたかと思いますが、言葉の定義がガバすぎる。自分に都合よく意味広げんな。他人の人生はオモチャじゃねえぞ...。 その上でCAにもモラルの高い人と低い人がおりますので、鵜呑みにするのもほどほどにね。と言う感じ。ぶっちゃけ会社の先輩なり営業なりに聞いた方が正確だと思うよ。

アフィリエイター?インフルエンサー? いい加減疑うようにしようね。さすがにIT業界じゃ生きていけないぞ。

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