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『SESは避けたいが、SIには入社できない。』その【中間あたりの会社】が見えなくなってる問題。

『SESは避けたいが、SIには入社できない。』その【中間あたりの会社】が見えなくなってる問題。

新卒・中途未経験あたり向けの話になりますかねぇ。

このへんわからんのは、ある意味しゃーないというか。IT業界内でもふわっとしてきているカテゴリ分けの話になります。グラデーションもあってきれいな区切りもありません。とはいえ、『ふわっとしている』とかで会社選びでガバって人生に影響するレベルの損するのは嫌ですし。未経験タグが外れたとて、自社のビジネスモデルがどういうものか理解できないまま勤務と言うのも非常にまずいです。

特にエンジニアの場合は専門職と言う事もあり、会社間の競争の構造やその中での自社の取り組みにさえ疎い人が多い。それゆえに『自社の勝利条件を知らないので結果的にローパフォーマー(ただし自認では優秀勢)』みたいな方も多く、数社を転々としつつ最後は世を恨みつつフリー堕ち。なんてことになるのも、とてももったいない感じです。経験者の方々も、この機会にどんな概念があるのか知っとく分には損は無いかなと。

今日のSIとSESの定義

システムインテグレーター(SIer)、SES会社のこの場での意味は、下記のものとします。

SIer:『事業会社がシステム外部に開発を頼む際の窓口に当たる会社。』(請負会社と言う意味は無い)頼むと全部やってくれる。リスクテイカー。
   →異業界での類似の役割の企業:ゼネコン・販売代理店・広告代理店など

SES:『時間で報酬を得る、派遣に似たサービス』を提供する会社
   →異業界での類似の役割の企業:派遣会社

※関連記事 
2025.12.04

SESとかSIerとかジシャカイハツとか、どういうものを指して言っているのか、人によって違うんだが。

謎の【中間あたりの会社】の正体

ビジネスモデルの違う、『複数の』SES

とりあえず図解するが早いと思うんだ。
まず、多くの人がイメージしているIT業界の姿はこんな感じ。

SESの定義によってはこのまんまで問題ないのだけど、実はこの『SES』の丸の中に複数のビジネスモデルの企業を含んでしまっている。ビジネスモデルが異なるという事は、儲け方が違うという事。これによる採用傾向や育成などへの影響は当然大きい。儲ける為に必要なリソースや行動が違うからね。わかりやすく2パターンを例に挙げて解説してみよう。

この場では仮に、入社を避けたい会社を【大量に未経験採用してロースキル案件に派遣する会社】と仮置きしてみる。この会社のビジネス構造や勝利条件はわかりやすい。

【ロースキルSESのビジネス構造】
・一人当たり単価は低くていい。
・数を確保して稼ぐ。
・採用コスト・難度が低い未経験者が採用ターゲット
・未経験なので派遣する難易度は高い。
・ハードルの低いロースキル案件を主力派遣先とする。
・スキルが伸びないので転職はされづらい。

と、こういうスキームになっている。
『単価』を上げる為に育成を強化しようにもクライアントもロースキル案件のクライアントに特化しており、すぐには単価は上がらない。スキルが付いたらそのメンバーの給与も上がって売上増の分が帳消しになるうえ、離職率も上昇してしまうし、それでも離職せず残ったエンジニア達を使って、単価の高いクライアントの開拓が完了して、ようやく高単価のビジネス構造に移行できる訳だ。これではたいして得をすることにならない。だったらそんなに頑張ってやらないよね。

では、比較しやすいように、入社したい会社を【受託会社的だが契約が準委任/常駐アリの会社】としてみよう。この会社のビジネス構造はこうなる。

【受託会社的なSESのビジネス構造】
・納品コミットが要求される為、スキルは必要。
・ゆえに数では稼げず、質重視になる。
・即戦力採用 or 育成が必要で、コストが高め。
・それでも儲かる為には、単価が高い必要がある。
・単価が高いので、外部人員を使える。
・単価の高いクライアント数社が主力となる。

こちらは『数』を増やそうと未経験者層を大量採用したとして、その大量の未経験者を売上や利益に変換する能力が無い。受託的なプロジェクトにノースキルの人員を投入したとしても戦力にならない。無理に自社PJに大量の未経験を投入すると、自社の経験者層の疲弊や離職を誘発することになるし、最悪、多数の納品失敗からクライアントから切られる展開も考えられる。
このタイプの会社が『数』を確保しようとするならば、未経験の大量採用を行うのではなく、外部から経験者のみを借りてくればよいという事になる。単価が高いという事は外部人材を使用しても利益が出るという事で、かつ自社の社員数と売上が比例しない構造になる。外部人員の稼働率が高いほど、正社員の給与は高くできるという事も言える。(これの究極がSIerのビジネス構造)

種類の異なる2社を雑に同一視する非合理

今日では2社はいずれもSESとされているが、クライアント・単価感・量/質の優先順位・平均スキル・外注利用の有無などが、すべて異なる。お互いに真似をする能力もない。これは端的に言ってまったく別の会社だよね。これをSESと括ったまま、『悪いSES会社を回避したい』『良いSES会社だったら入社したい』とかやってる人は多いのだけど、そもそも、良いのは何故か。悪いのは何故か。それぞれどういう構造や理由があるのか。この辺をまったく考えずになにか一部分だけを見て判断しようとしている感じで、まあだいぶ、頭が悪い話になっている。この状態で求職者側にメリットなどあるはずがない。

ただし『求職者側だけわからない』と言う状態は一部の買い手や仲介者にとっては利益につながる構造ではある。

こういうのを経済学などでは情報の非対称性と言う。

既成の商品などとは違い、人材を売り買いすると言う市場では需要と供給のバランスの逆転がよく起こる。(製品は量産できるので需要のギリギリまで生産されるが、人材は量産できないので)この場合は本来売り手に当たる求職者側への情報を制限し、一部の買い手や仲介者にとって都合の良い判断をさせることができれば、(特に仲介者にとって)大きな利益を生む構造となる。

人材を仲介する会社にとって都合がよい買い手とは、高額なフィーを支払ってくれる会社、または常連のサービス利用者となる訳で、仲介者はこれらのAランク顧客への送客がビジネス上の勝利条件となる。高額なフィーを支払ってくれる会社とは、メガベンチャーやコンサルティングファーム、大手のシステムインテグレーターと言う事になるだろう。これらの企業の採用ハードルは高く、調達した求職者すべてがさばける訳ではない。ビジネスの為にはもうひとつ、採用ハードルが低くかつ大量に採用してくれるクライアント層が必要で、これが常連のサービス利用者層となる。

さて、先に例に挙げた【ロースキル派遣的なSES】【受託会社的なSES】どちらが人材サービス業界の常連のサービス利用者層に近いだろうか? 答えは簡単だろう。

仲介する側としては、優良クライアント側を向いて商売をしたい。求職者に優良クライアント側を選択させたいので情報は制限したい。この違う業態2社を区別させたくないという気持ちは働く訳で、これらは雑にSESとして括り、求職者にとって同価値としたほうが都合がいい。そもそも常連ではない利用者の方を向いて商売はしていないので詳しくもならない。自分たちも区別がつかない。広告もそのようなスタンスで発信される。それに対して誰も疑問・不満も感じない。

高フィー・高ハードル側の企業へ就職させたいという話では仲介者・求職者間の利害は一致するが、低ハードル・大量採用側の企業へ入社させたいという話であれば、仲介者・求職者間の利害は相反する可能性が高いのだけどね。それに対して誰も疑問・不満も感じない。

こうして、頭が悪い話は今日でも再生産される。 

さっきの図の解像度を上げてみる

と、こんな感じになってるっぽい。

・1次層 『事業会社がシステム外部に開発を頼む際の窓口に当たる会社。』
・2次層 『システムの受託開発を行う会社』
・3次層 『よりプログラムに近い領域の受託開発を行う会社』

※ここでの『受託開発』では、請負・準委任を区別せず語ってると思ってください。

日本の1次層には『特に大規模なシステム開発・運用を請けられる』会社が並んでおり、一般に大手SIerと呼ばれる。2次層は主に大手SIerのアンダーでシステム開発の一部を受託するが、システム開発の規模によっては彼らがプライマリーベンダー・SIの機能を担当することもある。地方では大きな開発案件が少ない為、この層のベンダーが一次請ポジションにいることが多い。3次層はさらに小さな会社群で、主にプログラム周りの工程を担当する受託会社と言う感じでしょうか。やはり小規模な案件であればプライムを担当することがあります。

この下に存在するのがいわゆるSES的な巨大人材マッチング市場で、その中には主に『人出し』を役割とする会社(派遣会社に近い)『人材の仲介』をする会社(賃貸不動産仲介に近い)が多数存在しています。同じ人材マッチング市場内に存在しますが、この2者もビジネスモデルが異なります。

これらの会社ごとの階層・役割をSESと言う言葉を使わずに建設業界風に例えると、下記のような図になります。

謎の【中間あたりの会社】の正体とは、この中の【サブコン・工務店的 開発会社】の層の会社のことになります。ソフトウェアを受託する会社のことを、昔はソフトウェアハウス。ソフトハウス。なんて呼んだりはしました。(ただし当時は業態的にもSESとの差はなかった)

どんな会社?

おおまかな傾向として、社員数で100名~500名くらいの規模の会社が多そう。対顧客で責任を負ってシステム開発をする為、既存顧客や自社チーム内で未経験者の育成が容易です。しかし、未経験者枠は多くは無く、積極的に採用するタイプの会社でも社員数全体の1/10ほどの採用数となります。

たとえば富士ソフトさんなどは大企業ではありますが、SIのアンダーに入って受託開発を行う事も多く、専門のSIerと区別して大手ソフトハウスと呼ばれることもあります。この富士ソフトさんの新卒採用数は800人くらいと言われており、とんでもない数と言う印象になりますが、社員数10000人前後の会社ですので、未経験者の採用数は社員数全体の1/10を超えてはいません。

このほかの特徴として、当然ながら【取引先】があります。コーポレートサイトを確認すると、大手SIerの名前が羅列されていることが多く、そうなれば2次請・3次請のビジネスと言う事が分かります。(典型的なSESのスキームだと大手SIとは取引できない傾向が強い) 社歴が長い会社ほど大手ベンダーとの取引の可能性が高く、このソフトハウス層の会社も1970年代に設立されていたりなど、歴史がある会社が多いです。得意なクライアント業種を明確に持っていることが多く、その業種向けのパッケージ(既に作られているソフトウェア)を持っていることも多いです。2次請ならば担当工程も広く、請負・準委任どちらも対応する会社であることが多いと思います。(上流・運用が準委任、PG工程周りが請負が良いとされる)

どうやって見つけるの?

採用傾向がかなり新卒重視の会社が多いらしく、新卒向けナビサイトで多数確認できました。新卒人材紹介はかなり会社に依る印象で、近年新卒市場に参入してきた人材紹介会社の場合は、中~大規模くらいの派遣会社・SES会社が多くなります。これは近年参入した紹介会社は中途市場側でビジネスしていた会社が多いからではないかと思われます。就活中の学生で心当たりがある方などは、ちょっと就活の仕方を見直した方がよいかもしれません。

逆に、中途向けの求人サイトではほとんど見かけることがありません。こちらはSESの人材供給層の会社が主に掲載されている印象です。中途向けの人材紹介は未経験向けに絞れば、やはり中~大規模くらいの派遣会社・SES会社がエース客であることが多いのでないかと思われます。そもそも、中途未経験者には人材紹介は向きません。情報の非対称性はMAX、いいようにコントロールされる可能性が高く、かつフィーが乗る分、採用判断時に不利になります。

じゃあ、中途未経験はどうしたらいいんだよと言う話になりますが....。近年は、本当に勧められる手段が減ってきた印象です。IT業界へのデビューは、できるだけ新卒の間に済ませましょう。

まとめ

結論がこれじゃマズいんで、プロの営業さんたちにも聞いてみたけど、【良い手段は無い】が結論でした。とにかく情報を収集し、学習し、焦らず市場を見つめ、チャンスがあったら掴む。そういう話になります。昔は、求人サイトに掲載中の求人の中に常に2~3件くらいはちゃんと育成するつもりっぽい求人が見つかったのですが、近年はそれもなくなってる印象です。育成企業自体が減ってる、エンジニアバブル期の中途未経験の離職率が高く、そっぽを向きつつあるというのはありそうですね...。

逆に、【●●すれば大丈夫!】って言ってる人ら、だいたい嘘つきですよと言う事も言えるかも。だって、プロの目から見てもそんな方法ねえもん。あったら教えてくれよ記事にすっから。

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